第1回  『 原 点 』




 夏になるとソルトシーンでのビッグゲームが始まる。そのソルトでの大物はパワフルの一言。10キロくらいのシイラでも、生半可なドラッグのリールだとすべてのバッキングが引き出されてしまう。海だけではない。北海道の川にも野生のファイター、チャムサーモンやピンクサーモンがどっと押し寄せてくる。海で育ったサーモンたちは滅茶苦茶手強い。フックアップと同時に一気に暴走する。ピンクはジャンプし、チャムは重戦車のように上流に全速力で走り出す。川の流れと魚に振り回されると、いくらバッキングがあっても足りない。何とか魚を止めないと。
           
 ビッグゲーム用のソルトフライリールは北米大陸の軍事産業メーカーのものが知名度が高い。彼らは航空機等のパーツ作りを生かして精密かつ強固で高いクオリティのリールを作り上げた。しかし欠点がある。とにかく高価であった。それに故障時のアフターサービスなどにも時間がかかる。パーツも高価すぎる等など。日本で発売されているリールで企画から製造販売を自社で手がけているメーカーはほとんどない。低価格のものではアジア圏で製造されたリールがプロショップの陳列棚で威張っている。これでは仕方なくアメリカ製のリールを使うしかない。そうだった。
 石井鉄工は大正5年に私の祖父、故・石井増太郎が創設した会社。北米のリールメーカー同様、航空機などのパーツから軍需産業の部品等、様々な精密部品を製造してきた会社だ。
 私はこの石井鉄工で完全オリジナルで強力な心臓部を持ったドラッグシステムを開発した。そして強固であり計算され尽くした軽量ボディをデザインしている。全てを国内の自社・横浜工場で生産している。アフターサービスも瞬時にお応えできる。どんなターゲットにでも立ち向かえる最強のリールを作りたいから。そのリールをお客様に納得してお使いいただきたいから。心に焼き付くようなビッグワンを獲って頂きたいから。これが私のリール作りの原点だ。

2003年9月18日